人物考察スペシャル

BACK | NEXT | HOME

  4.アラミス   




私は三銃士はアニメから入りましたので、
日本全国のお茶の間のちびっ子に与えたインパクトは強かった。
それがアラミスの真似だったのか、パーマンのパー子の真似だったかわかりませんが、
アパートの二階から下の芝生に飛び降りるという危険な遊びしてましたっけ……。


そしてこの歳になって、いろいろな社会の裏事情を推察するに、
アニメのアラミスと原作アラミスとの決定的な違いは
男か女かである違いであるのではなく、


人格設定をつめていなかった



この一言に尽きるのではないかと……。

二次創作を書く際にいろいろなWEBにあった設定資料をさらってみましたが
(UPしてくれた方ありがとうございます)
現在に通じる自立した女性 だとか
ルパン一味でいうなら石川五右衛門 だとか
ええと、クールであるけどハートフルで、影があるけど明るく振る舞うとか、あれ、身なりには気を使っているけど、時々汚れ仕事もしてるし、現代的というけ れど結構古風だよ…って。みんな勝手に盛り上がって、好き放題言ってますけど、


じゃあ一体どういう人物像目指そうとしていたのでしょうか?


もともと、ひとりの原作者の創造物ではないゆえに、
各部署に丸投げしたというのか、裁量に任せたというのか
余白の多い人物像が想定外のところに転がって大ヒット、
お茶の間のちびっ子と殿方のハートを鷲づかみにしました。
そう、人間、ギャップに弱いもんなんです。


ところで、原作のアラミスといえば、
アトスとまっとうに議論を戦わせ、ポルトスを言葉巧みに誘導し、ダルタニャンの裏をかく、

とにかく器用すぎる男。


彼が女性にモテるのも、女の心を理解する繊細さがあるからで、
後の大陰謀の中心となるのも、人の欲望を誰よりも敏感にとらえることができるから。
舌戦と読心でもって白黒はっきりしない世界を泳ぎきります。



なるほど、
饒舌で女のような性格の男を裏返すと、寡黙で男のような性格の女になるのか、
そこいらの男よりもはるかに、
神経が太いというのか、肝が据わってるというのか
行動と決断がきっぱり、さっぱり「漢」であることですね。


その真骨頂ともいうべきは
第46話 10時だョ 処刑場に全員集合! の場面です。
銃士隊長でもあるはずのヒロインが、何故かそこに


大八車を押して登場する……。


原作アラミス君ならしないでしょう。


【ここが漢だよ!アラミスさん】
勝手に友人を裏切りほいほいと銃士隊長を引き受けてしまう→
冤罪としっていながらも逮捕に協力→部下に行かせず自分で現行犯逮捕→アトスがポルトスを逃がさなければ二人とも捕まえる気まんまんだった?→一切の事情 を説明せずに友を護送→何か訳があるのだろうと尋ねられ→「今は聞くな」と非情にバッサリ。→頑張れと逆に応援される
服を破いちゃったことに動転した後輩が口走る「君は女だったのか!?」→見ての通りだけど今それをそこで聞いてどうする→「そんなことはどうでもいい」と バッサリ。
銃士隊を勝手にやめる→ポルトスが友情のビンタ→もう友達やめると駄々をこね→「それで気が済んだ?」とまたもやバッサリ。

男の方が友情に未練を抱くものなのですが、それを実に切れ味良く切り捨て前に進むその様子に、見ていて爽快感すら覚えます。

もはや

孤高のダンディズム。



ともいうべきこの態度は
女の人が無理に男のふりをした結果というよりも、
本人の生得のものだったと考えると、むしろつじつまがあうと思います

そのひとつに、十六歳も年の離れた男性と恋愛関係にあったということが
あるのですが、
中身が「漢」な少女が、心が少年の中年男と出会い、短期間に意気投合した
という方が妙なリアリティーがあります。
ロマンもへったくれもない話になりましたね……。

さて、二次創作を書くときは
アトスとは逆に、余白を多くして人物をあんまり書き込まないようにして、読む人の想像にまかせるようにしています。

「十年後!」では…
原作もそうですが、第二部のアラミスは、基本アトスの信念にくっついていくのと、シュヴルーズ侯爵夫人やロングヴィル侯爵夫人にせっつかれて何かをする以 外、あんまし自分から主体的に行動を起こしてないような気がします。
志半ばで倒れたフランソワの分身が男装アラミスだとしたら、その役目の終わりは、復讐を遂げたときではなくて、むしろフィリップが自分で切り開いた人生を 生きるようになるまでを見届けることにあるのではないかと思い、それを書きたいと思いました。


で、二次創作を書いていて思ったのは、
意外とコメディーとの相性が良さそうだ
ということです。

長年のファンの皆さん、ごめんなさい……。

BACK | NEXT | HOME
Copyright (c) 2012 Kyoko ASHITA All rights reserved.
  inserted by FC2 system